東日本大震災にたいするアジア共同行動日本連の声明
電力独占資本と政府を弾劾する!
すべての被災者の救援・生活再建を!すべての原発を廃止する全人民的な決起を!
アジア共同行動(AWC)日本連絡会議
(1)
三月十一日に発生した東日本大震災は、大地震、大津波、福島原発事故によって、未曾有の被害をもたらしている。一ヶ月たった現在で、死者一万四一三三人、行方不明者は、一万三三四六人に及んでいる(四月二二日現在)。多くの市町村そのものが壊滅し、多くの人々が、家、仕事、家族、友人を失った。避難生活者は現在でも十三万人以上にのぼっている。さらに、チェルノブイリ原発事故に並んで史上最悪となった福島原発事故は、甚大な放射能被害を拡大させ続けている。放射能の拡散によって立ち入り禁止の警戒区域とともに避難区域が拡大し、多くの住民が避難生活を余儀なくされている。住民の命と健康は放射能によって脅威にさらされている。また、避難区域でなくとも、農民や漁民の生活そのものが放射能によって壊滅的な打撃をこうむり続けている。いまだ放射能は垂れ流し状態にあり、そのことがもたらす被害の拡大とその大きさは予測することさえ許さない事態となった。
(2)
この未曾有の被害をもたらし続けているすべての責任は、政府と東京電力、電機産業にある。政府と電力独占資本は、口をそろえて、巨大地震も、大津波も、これによる原発事故も、すべてが「想定外」だったと、責任のがれに汲々としている。だが、それは嘘だ。東北太平洋沿岸地方における巨大地震・巨大津波の危険性、およびこれによる原発事故の危険性は指摘されてきた。だが、そもそもこれまでの政府は、核武装の産業的基盤をつくりだすために、原子力政策を推し進めてきた。この原子力政策のもとで、電力各社と電機産業資本は原発建設を進め、独占利潤をほしいままにしてきた。この核武装と独占利潤獲得のために、原発事故の危険性を指摘する一切の声を無視し、日本の原発は「安全」だと言い続けてきた。その結果が、この未曾有の被害を招いたのである。
(3)
大震災発生から今日に至るまでの政府と東電の対応は、許し難いものである。政府は、行方不明者の捜索、被災者への救援物資、迅速な仮設住宅の建設、医療活動など、被災者救援をめぐるすべての対応において後手後手にまわった。また、政府と東電は、原発事故をめぐる情報を隠し、完全な報道管制下におき、情報を小出しにし、原発推進の御用学者を総動員し、「健康にただちに影響はない」、たいしたことはない、安全だ、等々と、深刻な事態を隠蔽することに汲々としてきた。しかも、廃炉にすることでの莫大な損失を恐れて、海水注入を実行することをためらい、遅らせ、事故の拡大を招いた。放射能のなかで働く労働者(その八割が被災者だ)はタコ部屋の如き生活を強いられつつ放射線にさらされている。これらの労働者の多くは、下請け労働者であり。非正規雇用労働者なのだ。労働者は、被曝線量の管理すらずさんなままで、命を削るような作業を強いられている。また、放射能にさらされた避難地域での多くの行方不明者の捜索は、後回しにされてきた。大地震、大津波による莫大な被害は、原発事故によって、比較にならない深刻な被害拡大を招くこととなった。福島第一原発は、炉心溶融という事態へと至っている。しかも、すでに再臨界に至っている可能性が高く、再度の水素爆発や水蒸気爆発によって、すざましい量の放射能が飛散しかねないという危機的事態のただ中にある。すでに、放射能汚染による農地の破壊、海に垂れ流した放射能汚染の拡大、さらに、今後、長期にわたる放射能漏れという事態が予想される中で、人々の生活、命と健康、そして海洋生物を含むすべての動植物や自然環境にとって深刻な脅威が持続するという事態が生まれている。
(4)
いま、被災現地では、犠牲の集中する労働者民衆が相互に連帯して全力で命と生活を支えあい、復旧・復興の取り組みを進めている。同時に、全労協などの労働組合団体や青年・学生、さまざまな民衆組織が、被災現地への救援・支援に取り組んでいる。これらの労働組合、民衆組織の側から、あらゆる被災者への支援・救援の取り組みを強め、運動力量を拡大していくことが重要である。わたしたち、アジア共同行動日本連絡会議も、その一翼を担っていく。
(5)
わたしたちは、政府が、あくまでも被災者の要求に基づいた救援と、雇用保障、住居保障をはじめとする生活再建を、無条件・無制限の救援・生活再建として行うことを要求する。また、それは、すべての滞日・在日外国人被災者に対しても同様に行われなければならない。また、震災に乗じた資本の解雇・賃下げ攻撃を許してはならない。放射能によって破壊された農地、農作物、漁業、これらはすべて全面的に補償されねばならない。原発労働者と住民への被曝調査と長期的な医療対策が、完全無料で実施されねばならない。 だが、政府と資本家階級は、「復興」を巨大なビジネスチャンスととらえ、資本の新たな利潤追求の場にしようと動き出している。加えて、政府は、復興のための消費税大増税をも打ち出した。貧しき者からより多くを搾り取る(被災者からも搾り取るということだ)ことで復興資金を確保しようとする消費税大増税を許してはならない。巨額の復興予算は、二百兆円をゆうに上回る額をため込んでいる大企業の内部留保を考えれば、消費税ではなく、なによりもまず、これらの内部留保をはきださせるべきなのである。また、軍事予算(四兆七千億円)、米軍への思いやり予算(五年間で九千二百億円)などからの転用を必ず実行すべきなのだ。
加えて、「国難」のもとでの挙国一致が扇動され、おまけに天皇の被災者巡礼が演出される。民衆どうしが助け合いともに連帯して生きようとすることを、愛国心や挙国一致体制へと収斂させ統合しようとする支配階級の策動を許してはならない。
(6)
政府は、被災地に対して空前の自衛隊十万五千人を出動させ、米軍も「トモダチ作戦」と名付けて最大一万六千の兵員、艦船二十隻、百六十機の航空機を出動させた。これら日米両軍の被災地での救援活動は、他方では「今こそ日米同盟の大切さを示す」との政治的意図に基づくものであった。前米沖縄総領事・メアの差別暴言によって普天間問題が完全に暗礁に乗り上げた直後の災害であった。さらに、「自衛隊と米軍は日本侵略の有事に準じる体制で臨んでいる。共同訓練などで積み重ねられた米軍との協力の真価が問われている」とあけすけに自衛隊幹部が述べたように、まさに日米軍事一体化の進展が明るみにでたのである。自衛隊は、今回初めて陸・海・空の統合部隊を作り運用した。防衛省や陸自仙台駐屯地内に「日米共同調整所」を設置して日米両軍間での緊密な調整と運用が進められた。被災地での救援・復旧のための活動と平行して、「有事=戦時」体制づくりが進展させられたのである。政府、マスコミは一体となって、自衛隊を賛美し、米軍を賛美する一大キャンペーンを繰り広げた。日米両政府は、この機に乗じて、沖縄や「本土」各地における米軍と米軍基地に対する反対世論を一掃し、逆に積極的な支持と承認をとりつけ、沖縄や岩国をはじめとする反米軍基地闘争を解体することを狙っているのだ。
一方、岩国米軍基地大拡張に反対し、愛宕山に米軍住宅を造ろうとすることに反対してきた「愛宕山を守る市民連絡協議会」は、愛宕山を米軍住宅にではなく被災者の仮設住宅にこそ使うべきだという提案を行っている。宜野湾市は、返還合意がなされながらもたなざらしになっている用地内の米軍住宅を被災者用住宅として明け渡せと要求している。わたしたちは、こうした動きこそを断固支持する。米軍思いやり予算を停止し、すべてを被災者救援に使うべきである。わたしたちは、日米軍事同盟に反対し、普天間米軍基地の即時閉鎖、辺野古新基地建設阻止、岩国米軍基地大拡張反対、すべての米軍基地を一掃するために、よりたたかいを強化する。
(7)
いまや、すべての原発は廃止されねばならない。すべての原発を停止させ、原発の全廃、脱原発にむけたエネルギー政策の根本的転換を実現するために、全人民の政治決起を作り出そう。
政府と支配階級は、核武装の目的をもって、日本の核開発を押し進めてきた。それは、原子力の技術的基盤を高め、また、原発稼働によって必然的に生み出されるプルトニウムを核兵器材料として蓄積していくことにある。そして、電力各社と電機産業は、原子力が危険きわまりない技術であるが故に、その権益の独占を許されてきた。電力会社は、電力売買の独占を根拠にした莫大な利潤をもって、政界、官界、財界、マスコミを買収し、この権力と権益は強化されてきた。政府と電力独占資本は、原発推進のために、原発が「安全」であること、地球温暖化を招かない「クリーンな」エネルギーであるという神話をたれ流してきた。政府と電力独占資本は、原発輸出にも力をそそぎ、最近でもベトナムに原発輸出を取り付けていた。だが、史上最悪の事故となった福島原発事故によって、その「安全神話」は事実をもって完全に崩壊した。にも関わらず、政府と電力独占資本、経団連などの原発推進派は、この期に及んでも、原発推進を続行しようとしている。そればかりか、東南海大地震が予想されるにも関わらず、浜岡原発の運転をやめようともしない。また、原発が集中する福井では、津波対策は最高で一メートル八〇センチの想定というお粗末さなのである。この地震列島において、第二、第三の福島原発事故が発生する可能性はきわめて高い。ましてや、新たな原発建設など論外である。上関原発建設計画を即時に白紙撤回させ、すべての原発の運転を停止させ、廃炉へと追い込み、全廃させねばならない。そもそも原発とは、たとえ事故をおこしていなくとも、そこで働く労働者の被曝と周辺の放射能汚染を前提としてしか稼働させられないものなのである。原発は、すべての生命体や自然環境と絶対に相容れないものなのだ。わたしたちは、いまこそ、すべての原発の停止・全廃、脱原発へのエネルギー政策の根本的転換を求めて、全人民的な政治決起を訴える。同時に、このたたかいを、日本の核武装化を阻止し、核兵器を全廃し、日米軍事同盟の破棄とすべての米軍基地を一掃するたたかいと固く結合して推進する。
福島原発事故に対して、フランスやアメリカなどの原発大国と、すべての原発推進派は、国際的に結束し、国際的な脱原発の流れが大きくなることを必死でくい止めようとしている。だが、ドイツでは二十五万人の反原発デモが起こり、ドイツ政府は、脱原発政策をとることを決定せざるをえなかった。脱原発は、まったく可能である。世界の脱原発を求める人民とともに、脱原発にむけた全人民的な決起をともにつくりだそう。
2011年4月22日
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