AWC日本連会員2名に対する韓国政府の不当な入国拒否措置に抗議する声明
2011年8月26日、韓国済州島(チェジュド)に到着したアジア共同行動(AWC)日本連絡会議の会員2名が入国審査で入国を拒否された。私たちは韓国政府法務省の指示に基づく今回の不当な入国拒否措置を腹の底からの怒りを込めて弾劾する。
私たちAWC日本連は8月27-29日に訪韓の旅を企画した。内容は、(1)済州島の労働者の実情を知る、(2)海軍基地建設予定の江汀(カンジョン)集落を訪れて見学して住民と交流する、(3)民主労総済州地域本部・AWC韓国委員会と共催で米軍基地と労働運動に関する討論会を開く、(4)4・3記念館を見学する、というものだ。30日にはオプションとして平和博物館を訪れ、アルトゥル飛行場跡と松岳山の魚雷艇発射場跡など日本軍の戦跡めぐりを行う予定だった。つまり、人権と平和を主題とする観光の旅だ。こうした旅が一体どうして入国拒否の対象となるのか。参加者は十数名だが、入国拒否の対象となったのは通訳者の2名で、それ以外の人は入国できた。
入管職員は会員2名を別室に連行した。そして、パソコンの画面を示しながら「法務省が入国拒否の対象者にしているので入国はできない。今日帰国しろ」と繰り返した。そして、「お前たちは入国拒否対象者なので移民法に基づき自費で帰国しなければならない」という趣旨が書かれた指示書を突き出し、2名に対して署名するよう要求した。会員2名はこれを拒否した。
会員2名は入管職員に対し、入国拒否の理由を何度も尋ねたが、入管職員は「入国拒否の理由は自分たちには分からない」と繰り返した。いつから入国拒否になっているのかを尋ねると、「8月から」という答えだった。7月までは入国できたわけだ。実際、会員2名は今年5月に訪韓したが、この時は入国できている。
会員2名と入管職員とのやり取りは通訳を介して行われた。済州空港の入管職員の中に日本語のできる者がいない(中国語のできる者はいると言っていた)ため、入管局側がアシアナ航空職員G氏を日本語通訳として動員したが、彼は2名の話を正確にではなく要約して入管職員に伝えた。ときにそれは自らの主観や意見も交じる水準だった。外国人の人権を韓国政府がどのように考えているかを如実に示す事例だ。
会員2名が「法務大臣への異議申し立てをしたい。その方法を教えてほしい」というと、入管職員は「そんな方法はない。帰国する以外にない」「帰国してから在日本韓国大使館・領事館に問い合わせろ」としか言わない。
しかし、これは全くの嘘だ。話の途中で民主労総の弁護士と連絡を取ったところ、異議申し立てはできるという。反論の機会を奪い、隠蔽し、平気で嘘をつく。これが「民主主義国家」韓国の実態なのだ。日本の入管職員と全く同じように人権を蹂躙する腐りきった態度ではないか。
会員1名は子連れのため、仕方なく自費でその日のうちに帰国した。しかし、もう1名は異議申し立てを要求して帰国を拒否し、28日朝現在も済州空港内で抗議の座り込みを続けている。
今回の入国拒否措置は、日本と韓国の労働者民衆が連帯し力を合わせて様々な課題を解決することに対する韓国政府の階級的憎しみと恐怖の表れだ。済州島江汀集落での韓国海軍基地建設は、実質的に中国に対する駐韓米軍のミサイル基地の建設だ。この数年間、住民の反対の意思を無視し、工事に反対する住民と支援者を警察が次々に逮捕する弾圧が続いている。海軍兵士が集落内を徘徊し、右翼の集会の準備を手伝うことまで起きている。検察・警察・海軍・右翼が声をそろえて反対派住民を「共和国に背後から操縦されたアカ」と決めつけるなど、イデオロギー攻撃も強めている。これに対して住民と支援者は、基地建設はむしろ戦争の危機を高めると批判し、逮捕・流血を恐れずに身を挺して闘っている。
韓国政府は、この基地反対運動と日本の反戦反基地運動が結びつくことを憎み、恐れているのだ。新自由主義グローバリゼーションに抗して闘う日韓の労働者が手をつないで労働者解放に向かって協力を強めていることを憎み、恐れているのだ。しかし訪韓団全員を入国拒否にすると非民主的な警察国家としての本質が露わになるので、それは避けつつ、しかし今回の日韓民衆の連帯と交流に致命的な打撃を与えようと通訳者2名に対象を絞ったのだ。
韓国政府当局者の念頭には、数十人の高校生の集まりが数万数十万のろうそくの火へと瞬く間に広がった2008年の反李明博政権ローソク集会の記憶があるのだろう。また、韓国政府当局者は、今年1月のエジプト革命を皮切りに今も現在進行中の中東・アフリカにおける独裁打倒民衆民主革命を他人事とは思えないと怯えているのだろう。だから、韓国政府は、済州島海軍基地建設反対闘争はもちろん、解雇撤回を求めてクレーン上での孤高闘争など労働者の現場での取り組み、そうした労働者の闘いを支援する民衆の「希望バス」運動などを、さらには日韓労働者民衆のささやかな交流をも、公権力の露骨な弾圧と介入でつぶそうと必死になっているのだ。絶対に許せない。
私たちは次の二点を韓国政府に強く求める。
一つ、韓国政府は、韓国内での労働運動・反基地闘争に対する弾圧を止めろ。
二つ、韓国政府は、日本政府と一緒に行っているメールの盗み見、盗聴、尾行などの違法行為や今回の入国拒否などの不当な措置を直ちにやめ、日韓連帯運動に対する妨害と人権蹂躙をやめろ。
私たちはこれからも韓国の労働者民衆との連帯運動を力強く推し進めていく。日韓労働者民衆が協力し、新自由主義グローバリゼーションを打破し、米軍基地をアジアから叩き出すために全力を尽くす。
2011年8月28日
アジア共同行動日本連絡会議
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