アジア太平洋地域におけるアメリカ帝国主義の行動指針とたたかおう!
2013年10月10日 ホセ・マリア・シソン教授
アメリカの軍事基地・介入支配・略奪に反対しよう!
国際人民闘争連盟(ILPS)は、アメリカ帝国主義の戦略的枠組みと諸政策への注意を呼びかける。そして、アジア太平洋地域において、米軍基地を強め、アメリカの軍事介入と略奪をエスカレートすることにたいして、この地域の全ての抑圧された人民が可能で必要な方法でアメリカ帝国主義と闘うことを呼びかける。多国間会合や関連会合における米国の発言と振る舞い、そして米国トップ行政官によるフィリピン訪問によって、アメリカ帝国主義の行動指針が明白にされてきた。
多国間会合とは、インドネシア・バリ島でのアジア太平洋経済協力機構(APEC)の年次首脳サミット、ブルネイでの第8回東アジアと第23回東南アジア諸国の首脳会合、そして環太平洋経済パートナー協定(TPP)交渉を含んでいる。米国トップ行政官による取り乱したフィリピン訪問は、米国の国内予算問題とその世界規模で悪化する困難にもかかわらず、地域の経済的政治的軍事的な権益支配を拡大するためのアメリカ帝国主義の取り組みを強調している。
アメリカ帝国主義の行動指針は、アジアへの「戦略的重点化」を遂行し、軍事力のいっそうの派遣だけでなく、他の目的のなかから、環太平洋経済パートナー協定、つまり米国主導の帝国主義同盟に都合の良い巨大な自由貿易協定を築くこと、とくにASEAN諸国との戦略的同盟を統合化することを含んだ広範囲な攻撃を伴うのだ。
帝国主義の頭目、バラク・オバマは、当初、東南アジア歴訪をスケジュール化し、バリのAPECサミット、ブルネイの米ASEAN会合につづく第8回東アジアサミット、そしてマレーシアとフィリピンに立ち寄ることを含むものであった。彼は、米国財政危機をどのように処理するのかに関し、議会で民主党と共和党が暗礁に乗り上げたために、土壇場で、この歴訪のキャンセルを強いられた。
予算の暗礁は、連邦政府の閉鎖、約80万人の連邦労働者の強制離職に帰結した。それは、企業や富裕層のための減税により、米国の税制基盤の劣化、そして実物経済の減退や大量失業から生じた。一方、軍事支出はさらに上がり、社会サービスとくにオバマケア(医療保険改革制度)は切り詰められている。米国は、財政と貿易の赤字をカバーするために、量的緩和(民間生産と一致する支えもなく、お金を増刷する)を長い間乱用してきた。今日、共和党と民主党の対立した要求のなかで、その乱用によって、債務上限問題は決定的となってきた。
オバマのかわりに、現在、ジョン・ケリー米国務長官が米国代表団を指導し、会合と訪問においてアメリカ帝国主義の行動指針を直々に押しつけている。米国外交政策の主任、ケリーは、最近、シリア攻撃の米国計画を率先し戦争屋としてこの数ヶ月間行動することによって、タカ派を目立たせてきた。
連邦政府サービスの部分的閉鎖を生み出した財政危機にもかかわらず、米国は、米国の経済的地政学的軍事的な利益を拡大し、ライバルである中国へのチェックを保つ手段として、東アジアへの部隊と艦船の大規模派遣を皮肉にも推進しつづけている。アメリカ帝国主義は、シリアへの爆撃と戦争を脅迫し、ソマリアとリビアで軍事行動に始めていることから、アメリカ人民の間で反戦感情が成長していること、および財政危機を明らかに無視している。
さる2011年以来、米国は、アジア地域に海軍戦力の60%を派遣する目標をもって、アジアの戦略的重点化を遂行している。米国は、基地を置く機会、アクセス協定、相互防衛条約、そして地域での二国間や多国間の軍事演習について、攻勢的に求め、継続している。米国の条約同盟国である日本、韓国、フィリピン、豪州は、いわゆる「ローテーション」―だが効果的な永久基地化―によって増大する米軍の部隊と艦船の受け入れを要求されている。
米国はまた、その条約同盟国に米軍事力受け入れのコスト増大をその背中に乗せ、基地の建設と運営、兵舎、環境低下、その他の社会コストのための支払い負担を受け入れ国に課し肩代わりさせようと欲している。韓国では、米国は、中国の近くの済州島に韓国政府によって建設されている軍事基地の使用を準備している。同じく、フィリピンでは、紛争状態にあるスプラトリー群島近くのオイスター湾に、フィリピン政府によって現在建設されている海軍基地を使うことが予定されている。
オーストラリアでは、約200名から250名の米軍兵士がローテーションとされ、ダーウィン空軍基地が事実上の米軍基地と見なされている。2014年までに、米国は、オーストラリアに1150名の米兵配備を予定している。その数字は、2016年まで2500名に増えることをいっそう求めている。フィリピンでも、米国は、ローテンションの米兵を増加し、フィリピンの施設へのアクセス、武器の事前集積を許可する枠組みの協定を交渉している。その新しい配備が外国軍隊と大量破壊兵器を禁止する憲法に違反し、最近の米比一時駐留協定においてすでに疑問視された前提を拡張していると主張する護憲や人民団体の繰り返される強い反対にもかかわらず、オバマ訪問はフィリピンが事実上の基地協定への署名を先頭で行うための刺激になると見られていた。
アジア「再均衡」への動きは、国防総省の戦略的ガイダンス文書である「米国のグローバル指導権を保持し、21世紀の防衛のための優先事項」で言われているように、米軍介入のエスカレートならびに米国経済権益の確保の両方にある。米国は、戦略的なシーレーンを支配し、戦略的な天然資源の産地とその流れを管理し、この広大なグローバル地域における国々に新自由主義経済の命令に従うよう強制することを求めている。
APECサミットの横では、米国交渉団が環太平洋経済パートナー協定(TPP)に関する多国間合意を忙しく徹底的に議論し結論づけようとし、オバマは年内に他の十一カ国との調印を求めている。米国の指揮下で提案されたTPPは、世界経済の40%を包含し、オーストラリア、ニュージーランド、日本、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、チリ、カナダ、メキシコ、ペルーのような国々を構成することになる。
貿易協定の詳細は、公衆から大きく秘密のままにされているが、主な条項は、メンバー国にたいして、幾つか保持された投資障壁を取り除き、薬剤のコストを上げデジタル革新と表現の自由を抑制する知的財産法を厳格に守らせ、民間企業が国際法廷以前に国家を訴訟することの許可を要求し、このようにして効果的にメンバー国が彼らの民族自決権のかなり大きな裁量をTPPの帝国主義者・立案者へ譲り渡すよう義務づけている。
最近の持続するグローバル恐慌の条件は、米国をして、他のグローバル地域のコントロールを維持させ、それを死活的に握らせ、アジアの再均衡を絶望的に努力させた。けれども、未解決の予算の暗礁や閉鎖が今なお収まらず、その打撃がひろがるように、オバマ政権も自身の背景の危機によって行きづまっている。米国人民は、危機の負担に苦しみながら、米軍の介入主義者の行動や増大する戦争のための支出に反対し、これまで以上にいっそう警戒しながら声をあげている。
世界の人民はアメリカ帝国主義の終わりを要求し、アジア太平洋や他のグローバル地域において、その残忍な爪を突き立てる絶望的な取り組みに反対している。諸国は、彼らの陸地から米軍基地と部隊を撤去し、超国籍企業による天然資源と労働力の略奪に抵抗することを呼びかけている広範囲な人民勢力といっしょになって、民族自決権の確立を欲している。世界の他のどこでも同じように、民族と社会の解放こそが、アメリカ帝国主義のアジア太平洋地域における行動指針にたいする唯一の代替政策である。