米帝国主義のカイライ政権であるジョコウィ政権の下でのインドネシア社会の状況
インドネシア民衆闘争戦線(FPR)
ジョコウィ・ユスフ・カラ政権は、米帝国主義のカイライ政権であり、インドネシアの半植民地・半封建体制の守護者/番人だ。
就任初日から現在まで、ジョコウィ政権は米国を先頭とする帝国主義と協力し続けており、インドネシアにおける帝国主義資本の活動のためのサービスと治安の改善に最善を尽くすと約束し続けている。ジョコウィ政権は、G20、APEC、WTOなど帝国主義の主導下でのすべての多国間協議体、そしてIMF、世界銀行、アジア開発銀行などの帝国主義の支配下にある機構での積極的な役割を続けている。インドネシアはまた、中国が率いる新しい融資機関であるAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加している。ジョコウィ政権は、少しの疑いももたずに、帝国主義諸国への外国債務を増大させる重要な鍵である新自由主義政策を受け入れ、実施している。
ジョコウィは、真の農地改革と民族工業化へのインドネシア民衆の熱望を抑え込み続けている。ジョコウィ政権が現在実施しているニセの農地改革プログラムは、900万ヘクタールの土地の分配を計画するというものであるが、大地主によるあぶらやし、木材、ゴム、ココア、サトウキビなどのプランテーションの拡張によって、また大規模のインフラ開発の利益のために収奪されている土地はほんの少しも減っていない。ジョコウィ政権は、外国銀行の全面的な支援を受けた大地主に最大限の役割を与えているが、この大地主こそが現在の危機の時代のなかでのインドネシアの主要産業である農業の後進性を維持させているのだ。
ジョコウィ政権は政治的にもその支配を強め、全国食糧計画その他の農業プログラムに軍部を関与させることによって、ニセの農地改革を推進している。農業省と軍部(とくに陸軍)とその軍事コマンドは、きたる3年間に食糧自給率目標を達成するために、バビンサ(陸軍を地方に派遣して農業プログラムや農民の活動を支援するプログラム)を先頭に立って推進している。しかし、インドネシアの民衆は陸軍という名の機構についてはっきりと理解しているし、それにだまされたりはしない。
インドネシア国軍による食糧安全保障計画(TMKP)は、実際には、民衆の土地を取り上げ、大地主の地位を保護・強化するだけのものではない。この最も反動的な機構(国軍)は、様々な口実(戦闘訓練場や軍事施設の建設など)による土地の収奪という封建的搾取をも行っている。農業生産の独占を維持し、貧農をその活動に引き入れ、貧農の闘争を抑圧することで、インドネシア国軍は農村部での支配を強め、真の農地改革を通しての生活の改善という貧農の熱望を押さえつけ、その熱望が高まることを防ごうとしている。
低開発下の半封建的経済システムを維持するためのジョコウィの最新の政策は、あぶらやしプランテーションの徴税と利用に関する大統領令2015年61号(パーム油基金:あぶらやしを原料とするパーム油の輸出に関税をかけ、その税収でバイオディーゼル燃料の補助金を拠出する基金)の発表であるが、それは困難下にある貧農をさらに深刻な状態に陥れている。
この政策は、そうした活動を通して貧農の収入を奪うだけでなく、国家経済の大黒柱としてのパーム油生産の増産を確保するために土地収奪を拡大するものでもある。ジョコウィ政権は輸出されるパーム油1トンあたり50米ドル、派生製品に30米ドルの税金を課すことで、遅れたあぶらやしプランテーションを改善し、バイオディーゼル燃料生産のために先進的なパーム油産業を創設し、それによって輸入燃料への政府予算からの負担を15%低下させるというものである。
ジョコウィ政権には、輸入依存性を低下させるために、シェブロン・パシフィック、トータルE&P、コノコ・フィリップス、ブリティッシュ・ペトロニウム、エクソン・モービルなどの巨大外国企業に支配されているインドネシアのパーム油やガスを取り戻そうという大胆さはない。実際、ジョコウィ政権は、貧農を搾取の標的にして、パーム油を増産し、国内エネルギー部門をテコ入れするとして、臆面もなく、農村部の後進性を維持しようとしているのだ。
ジョコウィ政権は民族工業を創りだすことは決してできない。民族工業を建設しうるだけの国内資本が蓄積されていないからだ。国有企業・国営企業の命運が国内経済発展のエンジンとして予測されるが、実際、それによってのみ、帝国主義者の多国籍融資機関(世界銀行、アジア開発銀行)、米国のエクシム銀行、フランスのBNPパリバ、ドイツ銀行、ドイツ商業銀行、日本の住友銀行、中国工商銀行、中国開発銀行、イスラム開発銀行などから借り入れを行っている外国企業への依存から脱却しうる。
ジョコウィ政権はまた、自由貿易政策を続けることで外国製品を国内市場に溢れさせ、外国期器用からの要求に応えて、タックスホリデー(一定期間の法人税一時免除措置)の対象を最低1兆ルピア以上の投資案件から最低500億ルピア以上に緩和し、対象となる産業分野も拡大した。今後もインドネシアの民衆は、「国内経済発展の原動力」としての外国資本の参入を得られないカイライ政権の絶望の表現として、ジョコウィ政権のさらに極端な政策を見ることにになるだろう。
国内経済は、投資や債務、工業用原料や機械、商品や食糧を通した外国資本への大規模な依存によって、ますます破壊している。ルピア通貨は国内経済の確立と前進によって支えられておらず、強くなるどんな条件も持っていない。ルピアの為替レートの低下の影響で、インドネシアの民衆の生活はますます悪化している。
貧農は、一方での種子、肥料、殺虫剤、農機具などの価格の高騰と他方での輸出用農産物の価格のさらなる低下によって二重の搾取を受けている。輸入食糧の価格の上昇は、食糧や飲料や関係する従業員など輸入製品に依存する小規模な産業部門をただちに直撃する。中小企業は製造費の上昇に耐えられず、破産したり、合併したり、外国企業に吸収されたりしている。
経済危機の嵐および国内経済の悪化のただなかで、ジョコウィ政権は一連の経済政策を推進し、それを通して新自由主義政策をおし進めている。それは、外国からの投資や融資を妨げている官僚制度を徹底的に見直し、投資許可を加速し、外国からの投資へのサービスと保護を拡大し、外国資本がインドネシアで長期の操業ができるようにするために、さまざまなサービスや便宜、および、規制緩和、脱官僚化、法律の制定、ビジネスの確実性など他の利益手段の提供することによって、米国が率いる帝国主義の利益に奉仕するものなのだ。
この経済政策パッケージのなかで、ジョコウィ政権はまた、最大わずか3時間で済ませられる投資手続きの簡素化や課税控除やタックスホリデーの緩和を行っている。この政策パッケージには電気、ガソリン、ガスの料金値下げ、労賃体系の引き上げ、起業家向け融資の拡大、輸出向け金融機関の設立と共に、低賃金労働力の提供の保証が含まれており、実際にそれは賃金に関する大統領令2015年78号で規定されている。政府はこの他にも、投資を呼び込み、帝国主義者たちに便宜を与えるために、地方での経済特区の開発、水道の整備、食品医薬品局の認可手続きの簡素化などをおし進めている。
こうした全政策は、インドネシアにおける同盟者、すなわち大地主、大買弁資本家、そして政府それ自体に全面的に支援された帝国主義の搾取のたくらみと直接に結びついている。
ジョコウィ政権のファシスト的抑圧下でも民主主義的・民族的な民衆運動は絶えず前進している
植民地時代以来の独立を勝ち取り確保するためのインドネシアの民衆闘争の長い歴史、今日まで絶え間なく続いている社会的・経済的・政治的・文化的な権利の実現を求める民主主義的闘争は、真の自由と主権を実現するまでは決して妥協できない民衆の真の熱望を映し出すものだ。
インドネシアの独立は1945年に宣言されたが、今日まで民衆は今なお真の独立を達成しえていない。とりわけ、何十万人ものインドネシア民衆を虐殺したスハルト・ファシスト政権の時代については、インドネシア民衆の記憶から消し去ることができない歴史となっている。同様に、抑圧も彼が辞職する最後の時までますますひどいものになっていった。しかし実際、民衆は(多くの犠牲者を出したが)最後まで闘いを止めることはなかった。そしてついに、スハルトが権力の座に就いてから32年目の1998年、民衆はスハルト独裁を打倒することに成功した。
常に帝国主義に依存している半植民地・半封建的な国として、スハルトからハビビ、グス・ドゥール、メガワティ、ユドヨノ、そして現在のジョコウィへと政権は変わったが、状況は本質的に改善されていない。搾取や抑圧は続いている。スシロ・バンバン・ユドヨノ政権の時代にも、民衆を犠牲にする様々なファシスト的な弾圧に直面しつつ、民衆の闘いは継続してきた。ユドヨノおよびその警察・軍隊によるファシスト的な弾圧によって、少なくとも120人が殺害され、何千人もが逮捕され、犯罪者扱いされてきた。
その数にはユドヨノの二期の任期期間中(10年間)ずっと抑圧されてきたパプア民衆に対する暴力や殺害は含まれていない。パプア民衆、とりわけ先住民は、その闘争と抵抗のために、分離主義者という偽りのレッテルを貼られ、自分たちの土地から追い出され、テロの標的とされ、追い回され、殺害され続けてきた。
現在、ジョコウィはその民族主義的幻想に身を隠して、民衆に対する様々な弾圧を行っている。現在の政権の発足からの一年で、ジョコウィ政権によって銃撃され、逮捕され、犯罪者化された人々の数少なくとも500人にのぼり、14人が殺害されている。データによれば、その最大の原因は農民層での紛争によるものである。そのうち5人はまだ学校に通っているパプアの子どもたちであり、その他の多くは農地拡張、鉱山開発、インフラ建設に起因する農村部での土地収奪に反対する取り組みをしていた農民たちであった。
こうした弾圧が続いているが、民衆は決して屈せず、彼らの闘争はむしろ高まり、前進し続けている。工業地帯では、低賃金、一時帰休、レイオフ、および様々な形態での結社の禁止や労働組合つぶしにもかかわらず、労働者たちが生活賃金、より良い労働条件、その他の権利の実現を求めて、一工場から工業地帯全体に至るまで抗議行動やストライキへと立ち上がり続けている。
実際、インドネシアの労働者は、生活賃金の実現を要求し、労賃を押さえつけている賃金体系に関する政府の政策に反対して闘いを強化し続けている。一時帰休、レイオフ、暴力的な弾圧など犠牲を受けることも少なくないが、抗議行動やストライキは続いている。
多くの危険に直面するが、労働者の闘争は無駄ではない。いくつかの場所、工場、工業地帯では、(いまだ少数で低いレベルであるが)労働者たちは自らの要求を勝ちとっている。例えば、インドネシア労働組合連盟(GBSI)のSBGTS支部が率いるシングルー・タンゲラン株式会社の工場の労働組合では、闘いによって通勤手当の増額、制服の支給、食事メニューの改善を実現した。
同様に、反民衆的な政府の政策に抗議する青年・学生による大衆行動も拡大し続けている。大規模な強制立ち退きに対する都市貧民による抵抗も拡大し続けている。
農村部では、農民たちが自らを組織し、独占資本やあぶらやしプランテーションの拡張のための土地収奪に対して共に闘い、ニセの農地改革に抗議し、インフラ開発のための債務や投資を拒否し、真の農地改革の実現を要求し、農業生産物の独占に反対して闘い続けている。
貧農たちは、闘争のなかで、政府や会社、さらには軍や準軍事組織による暴力に常にさらされている。その結果として、貧農や農村部の人々は、政府のための/あるいは会社による弾圧手段である治安部隊の犠牲者となっている。
流血の闘いを通して、多くの地域の貧農たち、とりわけ農地改革運動連合(AGRA)に率いられた貧農運動は、堅持しさらに発展させるべきいくつかの勝利を実現してきた。彼らの勝利の小さな成果として、数千ヘクタールの土地を取り戻し、占拠することに成功している。南スラウェシでは250ヘクタール、スマトラ島のメダンでは600ヘクタール、西ヌサ・トゥンガラ州のドンプでは1000ヘクタール、中部スラウェシのブゥオルでは3000ヘクタールの土地を取り戻し、さらにボゴールその他のさまざまな地域で土地を取り戻すことに成功している。
大規模な民衆の抵抗の高まりのなかで、政府は民衆運動の勢いを削ぎ、抑圧するためにさまざまな策を採っている。最近では、民衆の生活条件をさらに悪化させるだろう経済諸政策に続き、政府は抗議行動やデモンストレーションを禁止する政策を打ち出した。政府はまた、デモンストレーションを通してであれ、ソーシャル・メディアを通してであれ、政府を暴露することを禁じようとしている。
愛国主義の名の下に、政府は「Bela Negara」(国を守ろう)という政策を発表し、10年間で1000万人あるいは一年間で100万人を目標にして、(主要に)青年男性を勧誘して軍事訓練を施そうとしている。この政策は本質的には強制的に軍務を担わせようとするものであり、明らかに人的資源を損ねるものである。加えて、この政策はむろん、大衆の抵抗に差し向けられる民間の準軍事組織の兵員を準備しようとするものである。
全般的に、インドネシア政府は長い間、とりわけ対反乱ガイドライン(COIN)という米国の内乱鎮圧のための治安ガイドラインの発表以降、米国の治安計画を実施してきた。この政策を実行するために、政府は反暴動・反「テロ」の部隊である特殊治安部隊(デンサス88)を発足させており、また、世界平和の防衛という名目での平和維持部隊を派遣してきた。加えて、さまざまな治安防衛協力や合同演習を実施しているが、それは高まり続ける民衆運動と抵抗への対抗を目的とするものに他ならない。
今日のインドネシア民衆運動の緊急任務:ジョコウィ・ファシスト政権に反対し、民主主義的運動を前進させ、真の農地改革と民族工業化を実現すること
ジョコウィ政権は、インドネシアの経済条件を改善し、政治的自由を促進し、民衆の文化的状況を改善するためのいかなる条件も持っていない。この政府は、インドネシアにおける半植民地・半封建システムを維持し、天然資源を搾取し民衆を抑圧している大地主、大買弁資本家、帝国主義の共謀者だ。
現在の全国的政治状況は、インドネシアの民衆闘争を絶えず燃え上がらせる根拠を提供している。インドネシアにおいて搾取され抑圧されている民衆と搾取者・抑圧者との間にある主要矛盾は、政治・経済・文化・軍事の分野にわたる米帝国主義およびそのインドネシアにおけるすべての共謀者たちによる搾取と抑圧の拡大のために、信じがたいまでに拡大している。
こうした主要矛盾の先鋭化とともに、抑圧階級内部の矛盾も激しくなっており、それは民衆運動にとっては、運動と闘争をますます拡大し、力強く戦闘的に前進し、政治的・経済的・文化的な成果を実現するために有利な結果をもたらしている。
このような客観条件にもとづいて、民衆闘争戦線(FPR)はその加盟団体と共に、またインドネシアの他の民主主義的運動と共に、団結を打ち固め、強化し、そして連帯を強めつつ、次のような課題に奮闘していかねばならない。
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土地収奪およびインドネシア国家との共謀を通した帝国主義による民衆へのあらゆる形態での搾取と抑圧の根拠となっている土地独占に対する抵抗を強化すること。あぶらやしプランテーションの拡張その他の企業による犯罪と闘うこと(その最も間近の取り組みは2016年3月にある)。
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民衆に対するあらゆる形態での暴力、人権侵害、ファシスト的弾圧に反対すること。
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パプア民衆およびインドネシアのその他の地域の民衆による暴力に反対する闘争を支援すること。
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エスニック・マイノリティーの権利および自己決定の自由の承認を要求する闘いを支援すること。
AWC第四回総会への連帯声明
Ban the Base(基地の閉鎖を)ネットワーク
外国軍基地、介入、戦争に反対するグローバルなキャンペーン団体であるBan the Base(基地の閉鎖を)ネットワークは、2016年2月27日・28日に開催される米日のアジア侵略・支配に反対するアジア・キャンペーンの第四回総会に熱烈な連帯の挨拶を送ります。
この総会は帝国主義がその新自由主義攻撃、経済的な搾取と収奪を強めると同時に、介入の戦争のための戦争マシーンを猛烈に強化している重大な時期に開催されます。
この数年間、米国はその顧客国家との軍事同盟を激烈に強めつつ、韓国、フィリピン、沖縄、日本その他で自らの軍事プレゼンスと軍事基地を強化しています。
他方、日本は、憲法9条を解釈変更し、「集団的自衛」や「積極的平和主義」を口実にしてその軍事的機能の海外への拡張を認める新しい戦争法制の可決をもって、アジア太平洋地域における米国の軍事化のなかでより広範で積極的な役割を果たしています。
しかしながら、私たちは全世界での反帝国主義の抗議と闘争の復活をも目撃しています。
つい最近も、私たちは環太平洋パートナーシップ(TPP)協定その他の貿易協定や帝国主義的グローバリゼーションの破壊的影響に対する抗議の立ち上がりを多くの国々で目撃してきました。
私たちはとりわけ、米海兵隊基地の沖縄北部沿岸地域・辺野古への移設計画に反対する最近の大規模で全国的に連携した抗議、岩国での米海兵隊基地拡張に反対する闘争、宇川での米軍Xバンドレーダー基地建設に反対するキャンペーンなどに鼓舞されてきました。
大衆闘争は韓国、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、台湾、インド、その他アジア太平洋地域の大部分で断固として遂行されています。
私たちは総会がこれらの闘いを共有するプラットフォームを提供し、連帯と協力を強め、連携・支援をより緊密なものとして強化することを期待しています。
AWCがより大きな力を得て、成功することを願っています。
ボエット・フレカルス・ジュニア
Ban the Bases!(基地の閉鎖を!)コーディネーター
2016年2月26日