アジア共同行動・日本連絡会議

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日本軍性奴隷制損害賠償訴訟判決を支持する声明


日本軍性奴隷制損害賠償裁判の判決を支持するとともにこれを蹂躙し賠償と謝罪を拒否する日本政府を弾劾する声明日本軍性奴隷制の被害当事者のハルモニ12名が日本国を相手取り起こした損害賠償訴訟で、韓国における初の判決(以下「判決」という)が2021年1月8日に下された。ソウル中央地方裁判所は、日本国に対し、原告一人当たり1億ウォン(約1千万円)を支払えと命じた。原告が勝訴したのだ。

判決は、「慰安婦」制度を日本帝国主義による反人道的な犯罪行為と断罪している。以下、判決文をそのまま引用する。

『―日本帝国は侵略戦争の遂行過程で軍人たちの士気高揚および苦情発生の低減、効率的統率を追求するために、いわゆる「慰安婦」を管理する方法を考案し、これを制度化して法令を整備し、軍と国家機関で組織的に計画を立てて人員を動員、確保し、歴史上前例のない「慰安所」を運営した。10代初中盤から20歳余りに過ぎず、未成年又は成人になったばかりの原告らは「慰安婦」として動員された後、日本帝国の組織的で直・間接的な統制下で強制的に一日に数十回日本の軍人たちの性的行為の対象となった。原告らは過酷な性行為による傷害、性病、望まない妊娠、安定性が満足に保証されていない産婦人科治療の危険を甘受しなければならず、常時的な暴力に曝されて、まともな衣食住を保証されなかった。原告らは最小限の自由もない監視下で生活した。終戦後も「慰安婦」だったという前歴は被害を受けた当事者に不名誉な記憶として残り、いつまでも大きな精神的な傷となり、そのことにより原告らは戦後も社会に適応することが困難であった。

―これは当時の日本帝国が批准した条約および国際法規に違反しただけでなく、第二次世界大戦後の東京裁判憲章で処罰することを定めた「人道に反する犯罪」に該当する。

―よって、本件の行為は反人道的な不法行為に該当し、被告はこれにより原告らが被った精神的苦痛に対して賠償する義務がある。被告が支払うべき慰謝料は、少なくとも原告らに対し各1億ウォン以上と見るのが妥当である。』

判決において、意義のある部分は、大きく以下の3つである。

  1. 主権免除は、たとえそれが国家の主権的行為だったとしても、国際強行規範(1)に違反する反人道的犯罪行為には適用されない。また、主権免除は、被害を受けた被害者の損害賠償請求権をも剥奪することはできない(2)。よって、本事件に日本の主権免除を適用することはできない。
  2. 日本帝国による朝鮮植民地支配は「不法」であった。
  3. 1965年の日韓請求権協定、2015年の日韓「慰安婦」合意は、被害を受けた個人に対する賠償は含んでおらず、よって被害者の損害賠償請求権は消滅していない。

以上の内容を含んだ、本判決はまったく正当である。わたしたちは、第一に、判決を全面的に支持する。第二に、日本政府が判決への不当な非難をただちに中止し、判決を真摯に受け止め、被害者への謝罪・賠償を行うことを要求する。第三に、すべての日本軍性奴隷制被害者への謝罪・賠償を行い、真実究明、再発防止のための歴史教育の実施等を行うことを要求する。

本判決は、「慰安婦」制度について、日本政府の加害責任を全面的に認めた画期的判決であり、朝鮮民主主義人民共和国はもちろん、フィリピン、日本など各国の日本軍性奴隷制被害者の闘いにとって、大きな力になるだろう。日本政府が慌てふためき判決を否定するのはそのためでもある。

今回の判決を勝ち取るに至った原動力は、何よりも韓国の日本軍性奴隷制被害当事者の闘いと、次の世代に同じ体験をさせないために立ち上がってきた被害者同士の国境を越えた連帯だった。2015年の日韓「慰安婦」合意は、これを受け入れた朴槿恵政権に対する韓国民衆の広範な怒りと立ち上がりを引き起こし、ろうそく革命の大きな背景の一つとなった。圧倒的な韓国民衆の民意が、文在寅政権、裁判所を突き動かし、徴用工裁判に続いて、「慰安婦」裁判の本判決でも、日本の残虐な植民地支配を糾弾した。この韓国民衆の声にわたしたちは応えていかねばならない。

この裁判の過程では12人の原告のうち7人が亡くなった。判決後、ハルモニたちは「私たちが何の罪を犯してこのように生きてこなければならなかったのか」と、日本政府に謝罪を求めた。そもそも、この判決があろうとなかろうと、日本政府は、朝鮮植民地支配、アジア侵略の加害の責任を認め、すべての被害者に誠意ある謝罪と賠償を行わなければならない。加害を認めないばかりか、正当な本判決にバッシングを加え、被害者を何度も蹂躙する日本政府を断じて許してはならない。わたしたちは、被害者らと連帯し、日本において最大限の闘いを展開していこう。

2021年1月31日
アジア共同行動日本連絡会議


(1) 強行規範とは、奴隷売買、海賊行為、侵略などの禁止がその代表例で、規範を逸脱する条約規定を無効にする法規範をいう。国は自由な合意に基づいて締結した条約には原則として拘束されるが、その内容が強行規範とみなされる法規に抵触する場合には、当事国はその無効を主張できる。つまり判決は、国家による人道に反する犯罪行為である日本軍性奴隷制に主権免除は適用できない、よって日本国を被告として裁くことができる、とした。

(2) 判決より、「国家免除理論は、主権国家を尊重して、むやみに他国の裁判権に服従しないようにする意味を持つものであって、国際強行規範という絶対規範に違反して他国の個人に大きい損害を負わせた国家が国家免除理論の後に隠れて賠償と補償を回避できる機会を与えるために形成されたものではない。

主権免除についての付言。主権免除の中身も変化している。国際的には半世紀前にすでに、全ての事件に主権免除が適用されるとする絶対免除主義から、国家の行為を主権的行為と業務管理的行為(≒商業活動)に分けて前者にだけ免除を認める制限免除主義へ転換し、さらに、国連裁判権免除条約(日本も批准しているが未発効)は、商取引だけでなく、雇用契約、財産所有、知的財産権、さらには「人の死亡若しくは身体の障害又は有体財産の損傷若しくは減失に対する金銭によるてん補に関する裁判手続き」(第12条)にも主権免除を援用できないと規定している。

その上、第二次世界大戦におけるドイツの戦争行為によるヨーロッパ各国の被害者が90年代にドイツを相手取って補償を求める裁判を相次いで起こしたが、このうちギリシア(2000年)とイタリア(2004年)では強行規範に違反したドイツの主権免除を認めない判決が各最高裁で出ている。つまり、他国を被告とする裁判の範囲が拡大し、近年ではそれが戦争犯罪にまで及んでおり、それに伴い主権免除の適用範囲が縮小して行っているのが国際法の現在の流れである。

関連情報

» 日本軍性奴隷制損害賠償裁判の判決を支持するとともにこれを蹂躙し賠償と謝罪を拒否する日本政府を弾劾する声明(PDFファイル・約299KB)

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