陸自大演習に対する抗議声明
陸自大演習弾劾!琉球弧の対中国最前線基地化を許すな!
9月15日から陸自10万人以上を動員した大演習がはじまった。コロナ感染が爆発する中、国会も閉会中であり、総選挙を前にして新聞・テレビなどのマスメディアでの報道もほとんどなされないままに同演習が行われている。
今回の演習は、1993年以来、実に28年ぶりの陸自全体を動員した大演習となっている。主な訓練項目は、①出動準備訓練、②機動展開等訓練、③出動整備訓練、④兵站・衛生訓練、⑤システム通信訓練の5項目である。具体的には、出動準備訓練では、全国約160ヶ所の駐・分屯地における出動訓練(弾薬や糧食などの受領、配分、トラック等への積載等)。機動展開等訓練では、第2師団、第6師団、第14旅団の西部方面区への機動展開、その他方面隊では機動展開部隊の通過支援など。移動には、民間の船舶・港湾の利用や高速道路、JRの使用、在日米軍基地の援助を受けるとしている。出動準備訓練では、各方面隊ごとに予備自衛官の招集と部隊の編成等。兵站・衛生訓練では、全国の補給処に集積した補給品・装備品の梱包や民間輸送を利用した西部方面区域への移送。システム・通信訓練では、通信科部隊の西部方面区への移動・展開と九州一帯における通信基盤の構築を行うとしている。
機動展開では、第2師団(北海道5200人)、第6師団(山形3800人)、第14旅団(香川3100人)の約12000人が列島を移動し九州へ。陸自の車両約2万台、航空機約120機が参加予定。全国160ヶ所の駐屯地や演習場で88000人が実働演習に参加するとしている。
自衛隊内でのコロナ感染が全国的に報告されている中で、移動部隊のPCR検査は、出発前の1回限り。その他の部隊の検査実態も明らかでない。さらに、そのような部隊が民間施設を利用するにもかかわらず、防衛省陸上幕僚監部は、移動先、移動ルートを明らかにしていない。九州を中心に11の演習場や8つの港湾施設を利用することだけが明らかにされているに過ぎない。
今回の大演習は、琉球弧で進む自衛隊のミサイル部隊、監視部隊の配備にあわせて、対中国包囲網の実践的訓練として強行されている。「尖閣諸島」を巡り離島奪還訓練の必要性が声高に叫ばれ「台湾有事」などの中国脅威論がマスメディアによって煽られている。
安倍・菅政権、さらには両政権を引き継いだ岸田政権もまた、こうした「尖閣危機」や「台湾有事」を煽り立てながら、米国と一体となって対中国との覇権争いに勝ち抜くために、軍事的態勢強化の道を突き進もうとしている。対中国を意識した海自や空自を動員しての日米共同訓練、さらに日・米・英・豪・蘭・独の共同訓練が頻繁に行われており、今回の陸自大演習もこれらと並行して行われている。
また、この間の「戦争ができる国づくり」にむけた動きの中で、今回大規模に民間の船舶や鉄道、港湾施設などを利用しながら国内の戦争総動員体制の確立をさらに推し進めようとしている。陸自大演習はまさにその実践訓練に他ならない。絶対に許すことはできない。
菅政権は、8月31日防衛予算の概算要求を閣議決定した。前年度比3562億円増の5兆4797億円。防衛省は引き続き南西諸島の防衛力強化を前面に打ち出している。
台湾有事をめぐり麻生は「存立危機事態」に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得ると発言した。制服組トップを務めた河野克俊前統合幕僚長は、「有事になれば沖縄、奄美も戦域になるのは軍事的に常識。そうならないための議論が必要だ」と対中国防衛力の増強を訴え、沖縄・奄美など琉球弧の人民は再び戦禍も覚悟せよと言い放っているのだ。
90年前の1931年9月18日、関東軍が満州の奉天近郊の柳条湖付近で、南満州鉄道(満鉄)の線路を爆破した。この爆破は、関東軍がこれを中国軍による犯行とデッチあげることで、満州さらにはその後の中国大陸における軍事侵攻および日中戦争突入の口火となった。「暴支膺懲(ようちょう)」(横暴な支那を懲らしめる)は、その時に軍部が戦意高揚のために作り出したスローガンだったが、今再び、中国に対する敵視政策を拡大させ、戦争準備を本格化させようというのである。自民党内の極右・軍国主義者である安倍、そしてその後継を自認する高市が総裁選に臆面もなく出馬し、「敵地攻撃論」を公言する中、議員票114票を獲得するという異様な事態となっている。すでに自民党は、憲法遵守も「専守防衛」も一顧だにしないのはもちろん、そうした事態にメディアも一切批判せず問題にもしないという驚くべき状況なのだ。
来年で日中国交正常化(1972年)の締結から50年となる節目に、日本政府は再びアジアにおける軍事的覇権の確立、戦争大国へと突き進もうとしている。
中国を仮想敵国とした今回の陸自大演習を絶対に許してはならない。「中国の脅威から日本を守る」という欺瞞的宣伝・扇動を許さず、アジアの民衆とともに陸自大演習に反対しよう。「南西諸島」への自衛隊配備・増強、ミサイル部隊の配備に反対しよう。「尖閣」への排外的宣伝・扇動を許さず闘おう。沖縄や岩国をはじめとした反基地の闘いと結合して、戦争を絶対に許さない闘いを前進させよう。
2021年10月10日
アジア共同行動(AWC)日本連絡会議
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