ウトロ放火容疑者逮捕を受けての青年による声明
2021年8月30日、京都府宇治市ウトロ地区で住宅や倉庫など7棟が焼ける火事が発生し、12月6日、これを放火した疑いで容疑者が逮捕された。この火災によってウトロ住民の生活と権利を守る闘いの中で作成・使用された看板など、重要な資料も多く焼失した。
ウトロは、太平洋戦争中に国策として続けられた京都飛行場の建設事業(日産車体の前身企業である国策企業、日本国際航空工業が受注)に従事した朝鮮人の飯場に起源を持つ、在日朝鮮人の集住地域だ。日本帝国主義による朝鮮半島の植民地支配によって生活を破壊され、日本に渡ってこざるをえなかった朝鮮人が、日本帝国主義の侵略戦争のために苦役を課された歴史的な経緯を持つ。日本が敗戦して建設事業は断ち切りになったが、従事していた朝鮮人の多くは帰国しようにも帰国できないなど、やむを得ない事情でウトロに定住した。ウトロの住民は、責任を取らない日本政府や京都府、宇治市と、土地を引き継いだ日産車体によって、水道の敷設を妨害されるなど最低限の生活の保障すらされなかった。
さらに住民に全く知らせぬまま日産車体は西日本殖産に土地を売り渡し、住民の追い出しにかかった。これに抵抗する住民の力強い闘いが展開され、それには日本や韓国に住む多くの人々も連帯した。最終的には日本全国の在日朝鮮人や韓国の民衆らによるカンパなどで土地の東半分を購入し、現在はその土地に住民が住むための公営住宅が建設されている。
今回起きたウトロの放火は、容疑者の動機などは未だ不明だが、同容疑者は2021年7月にも在日本大韓民国民団の愛知県本部の建物などに火を付けた疑いでも既に逮捕・起訴されていることから、一連の事件は民族差別など憎悪や偏見による犯罪=ヘイトクライムの可能性が高い。
日本社会において、敗戦後から現在に至るまで在日朝鮮人・韓国人への差別意識によるヘイトクライムは無数に起きてきた。これは、日本政府が一貫して朝鮮植民地支配の被害者に対する誠意ある謝罪と賠償を行わず、在日朝鮮人の民族的諸権利の保障を行っていないこと、言い換えれば戦後責任を放棄していることに最大の原因がある。責任を取るどころか日本政府は、「朝鮮民主主義人民共和国の脅威」や、韓国ヘイトを積極的に社会にばら撒くことによって、深刻化する貧困と格差で苦しむ人々の不満のはけ口として在日朝鮮人・韓国人を利用しているのだ。
日本政府は植民地支配・侵略戦争への無反省の延長線上で、在日朝鮮人・韓国人をはじめとする日本に住むすべての外国人の権利を保障しようとせず、入管法改悪に向けて非正規滞在の外国人を「犯罪者予備軍」とするような差別的言説を積極的に喧伝するなど、差別・排外主義を加速させ続けている。日本社会に浸透した根深い差別・排外主義によって、在日朝鮮人・韓国人をはじめとした日本に住む外国人は日々差別からの恐怖と暴力に脅かされ、実際に人権を蹂躙する形での排除が行われている。
私たちは、今回のウトロ放火事件の真相究明と再発防止措置を要求すると同時に、朝鮮植民地支配・侵略戦争に対する日本政府による誠意ある謝罪と賠償、在日朝鮮人の民族的諸権利の完全な保障を求める。さらには、日本の差別政策によって実質的な無権利状態に置かれているすべての在日・滞日外国人の権利の保障を求める。日本社会における在日朝鮮人・韓国人への差別、滞日外国人への差別との闘いは私たち自身が自らの未来を切り開くために必要不可欠な歩みだと確信する。ともに声をあげ、誰もが差別されることのない社会の実現のために行動しよう。
2021年12月24日
日朝友好青年・学生ネットワーク京都
AWC Youth(アジア共同行動関西青年部)
京都市役所前座り込み行動
|