アジア共同行動・日本連絡会議

日米のアジア支配に反対し、アジア民衆の連帯を推進する

日本連絡会議ニュース

 

 

 

元徴用工問題に関する声明


韓国政府の「強制徴用大法院判決に関する政府の立場」を批判し、日本政府による過去の歴史問題の歪曲と清算策動を弾劾する声明

今年3月6日に韓国政府が「強制徴用に関する大法院(注:日本の最高裁判所に該当)判決に関する政府の立場」(以下「立場」という)を発表した。

「(韓国)政府は、1965年日韓国交正常化以来構築されてきた両国間の緊密な友好協力関係を基礎に、今後日韓関係を未来志向的により高いレベルへ発展させていこうという意志を持っています。さらに、(韓国)政府は、強制徴用被害者の方々が長い期間被ってきた苦しみと痛みについて深く共感し、高齢の被害者及びご遺族の方々の痛みと傷が早急に治癒されうるよう、最大限努力していくつもりです。」という文言から始まる「立場」は、日帝植民地支配期の強制徴用事件についての2018年10月と11月の大法院判決以降の経過に触れ、2019年7月日本が韓国向け輸出規制を発表し、2019年8月韓国は日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の終了を通知したが、コロナ禍以降、日韓関係は事実上放置されてきたと述べる。

そのような状況の中で、2022年5月尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発足し、そのもとでの韓国内の意見の集約及び対日協議の結果などを基に、強制徴用大法院判決に関して次のような方策を発表するとした。その方策は、「(韓国の)行政安全省傘下の『日帝強制動員被害者支援財団』が、強制徴用被害者・遺族の支援及び被害救済の一環として、2018年大法院の3件の確定判決の原告の方々へ判決の金額及び遅延利子を支給する予定」、「同財団はさらに、現在係争中の強制徴用関連その他の訴訟が原告の勝訴として確定する場合、同判決の金額及び遅延利子をも原告の方々へ支給する予定」である。更に、「同財団は、強制動員被害者の苦しみと痛みを記憶して未来世代に発展的に継承していくために、被害者の追悼及び教育・調査・研究事業などを一層実のあるものとし拡大していくための方策を積極的に推進する」と述べ、「財源に関しては、民間の自発的寄与などを通じて用意し、今後財団の目的事業と関連した可用財源を一層拡充」するとしている。

要するに、韓国の政府が、韓国の企業の寄付金を集めて、強制動員・強制労働を強いられた被害者とその遺族に判決で示された金を払う、ということだ。そのうえで、金大中・小渕共同宣言の発展的継承と日韓関係の改善を日本政府に望んでいる。

尹錫悦大統領は「立場」発表の5日前に第104周年3・1節記念の辞で「3・1運動から一世紀が過ぎた今の日本は、過去の軍国主義の侵略者から、われわれと普遍的価値を共有し、安保と経済、そしてグローバル・アジェンダで協力するパートナーになりました。特に、複合した危機と深刻な北の核の脅威などの安保の危機を克服するための日米韓三か国の協力がかつてなく重要になりました。われわれは、普遍的価値を共有する諸国と連帯・協力し、われわれと世界市民の自由の拡大と共同の繁栄に責任ある寄与をしなければなりません。これは、104年前、祖国の自由と独立を叫んだ烈士のその精神と決して異なりません。」と述べた。「立場」発表以降も同じ趣旨の発言を繰り返している。

だが、報道によれば、強制動員訴訟原告15人のうち、財団の支給を受け入れるとしているのは4人で、被害当事者3人全員を含む11人は拒否している。当事者ではない第三者による弁済という今回の方法は、当事者が拒めばそれで終了する。今、韓国の至る所で「屈辱外交・屈辱解決策」「売国行為」「相手国との合意がないままの一方的かつ拙速な発表という前代未聞の蛮行」と厳しく指弾する声が猛然と巻き起こっている。抗議行動が「立場」発表直後に始まり、1500以上の団体によって「強制動員解決策反対汎国民署名運動」が発足した。発表翌日には国会議事堂前で運動圏と野党により抗議集会が開かれ、被害当事者は「たとえ飢え死にしたとしても財団の金は受け取らない。尹錫悦はどこの国の大統領か? 直ちに辞任しろ!」と激しく批判している。

「立場」は、第一に、日本政府の謝罪と加害企業の賠償という被害者の要求を完全に無視し、加害の歴史的事実を一貫して否認してきた日本の政府と企業の恥ずべき態度に免罪符を与えるものだ。第二に、日本帝国主義による強制的占領と植民地支配が違法であり、日本の戦犯企業は強制動員と強制労役に対して賠償しなければならないとした2018年10月の大法院判決を踏みにじるものだ。第三に、既述の3・1記念の辞と同様に日韓協力を打ち出すことで、歴史教科書を改ざんして加害の歴史を逆に美化しつつ、集団的自衛権の行使と敵基地攻撃能力の保有に踏み込んだ日本政府の「戦争国家」づくりを容認する行為だ。第四に、日韓の歴史問題をどのような内容であれとにかく決着させて日韓関係改善の障壁を取り除き、日米韓の軍事協力を軍事同盟へ推し進めて中国との対決に韓国を動員しようという米国の執拗な要求を受け入れ実践したものだ。

「立場」は全く不当なものであり、私たちはこれを直ちに撤回することを韓国政府に求める。

だが、今回の事態が起きた最大の責任は、加害の歴史的事実を認めず無視する日本の政府、マスコミおよび政府支持勢力にある。

首相岸田は「立場」発表の翌日に国会で、「日本政府としてこの措置を、日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価する」、日韓の「戦略的連携を一層強化していく必要がある」と答弁した。また、首相官邸での記者の質問に「1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる、それが日本政府の立場だ」と答えた。

では、朝鮮植民地支配に関する「歴代内閣の立場」はどういうものか。

  • 「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」(村山首相談話1995年)
  • 「小渕総理大臣は……痛切な反省と心からのお詫びを述べた」(日韓共同宣言1998年)
  • 「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします」(菅首相談話2010年)
  • 「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。」「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」(安倍首相談話2015年)

要するに、日韓協定を含め、以上の談話と宣言を「全体として引き継いでいる」日本政府の立場とは、①朝鮮植民地支配に違法性はなく、植民地支配に対する請求権は1965年の日韓請求権・経済協力協定で消滅した。②したがって、これまで通り「謝罪」はせず、「賠償」する必要はない。②直近の安倍談話を継承し、「反省」や「お詫び」さえ言わない――というものだ。

日本政府は、国を奪い、民族性を踏みにじり、人間の尊厳を蹂躙した歴史的事実と自らの加害責任を1ミリも認めない、それどころか、過去の歴史問題について韓国側が措置をとれと被害の側に責任を押し付けて平然としている。私たちは強い怒りを禁じ得ないし、日本政府を徹底的に弾劾する。

同時に、米バイデン政権は、中国に対する軍事的圧力強化構想の軸である日米韓軍事同盟づくりのために、その障壁である日韓関係を改善せよと韓国に圧力をかけ続け、非民主主義的で法治と正反対で人権にもとる内容の「立場」発表を、政府を挙げて歓迎した。今年1月には許さなかった尹錫悦の国賓としての訪米を直ちに許可した米バイデン政権にも、今回の事態について重い責任がある。私たちは米国政府をも徹底的に弾劾する。

私たちは、今回の強制動員訴訟に関する韓国政府の「解決策」をおごり高ぶった態度で受け入れようとしている日本政府に断固として反対し、以下のように要求する。

  • 三菱重工業と日本製鉄は、韓国大法院判決を履行し、被害当事者と遺族の原告への謝罪と賠償を行え!
  • 日本政府は朝鮮植民地支配の違法性・不当性を認めろ!
  • アジア侵略と植民地支配の全ての被害当事者に謝罪と賠償を行え!
  • 日米韓軍事協力の強化と日米韓軍事同盟づくりをやめろ!
  • 朝鮮半島と東アジアの軍事的緊張を高める全ての軍事演習を中止しろ!
  • 朝鮮民主主義人民共和国と韓国への差別と民族排外主義をやめろ!

2023年3月15日
アジア共同行動日本連絡会議

関連資料

» 韓国政府の「強制徴用大法院判決に関する政府の立場」を批判し、日本政府による過去の歴史問題の歪曲と清算策動を弾劾する声明(PDFファイル・約KB)

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