日韓FTA/EPA交渉再開にむけた実務協議開催に際し、外務省に申し入れしました

       第4号

    2008年1月29日

    毎週火曜日発行

 

 

 

 

皆さん、ご無沙汰しております。「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンの土松です。

複数のメーリング・リストと個人・団体の皆さんにお送りします。長文ですみません。また、重複する方はお許しください。

日付が変わりましたので、本日(6月25日)のこととなりますが、日韓自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)の交渉再開にむけた実務協議が東京で行なわれます。

このことに際し、わたしたち「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンのメンバー3人は、昨日(24日)外務省を訪れ、「日韓FTA/EPA政府間交渉再開に向けた実務協議の中止を求める申し入れ書」を手渡しました。

申し入れに応じたのは、外務省アジア大洋州局北東アジア課日韓経済室の山後(やまご)貴弘・外務事務官と、同じく日韓経済室の内山氏(記録担当)でした。

2006年11月の第6回交渉以降、中断していた日韓FTA/EPA政府間交渉ですが、今年4月の日韓首脳会談で交渉再開について6月中に協議することに合意し、その具体的実務協議が本日行なわれることになったのです。

以下は、わたしたちの申し入れに対する山後・外務事務官の応対です。

今日(24日)の申し入れは、赤堀毅・日韓経済室長およびアジア大洋州局長(齋木昭隆)に伝える。4月の日韓首脳会談で交渉再開が決まったわけではない。

交渉を再開するか否かも含め、今回の実務協議で詰める。交渉再開までは日韓経済室が担当し、交渉再開が決定すれば、外務省経済局が担当することになる。

また、他の省庁との関係では、外務省、経済産業省、農林水産省、財務省が担当し、外務省が全体の取りまとめを行なう。どの地点から交渉を再開するか(これまで6回の政府間交渉の積み重ねの上に行なうのか、白紙に戻して初めから開始するのか)は、明日(25日)の実務協議を踏まえて決める。

交渉ごとで、どの地点から始めるかは、相手方もあることなので公表できない。中身も明らかにできない。交渉成立後、国会の批准を経るのだから、プロセスはそれで果たせる。しかし今日のように申し入れなどの声は聞く。その内容を検討した上で、交渉に反映させるかどうかは決めるが、交渉内容は対外的に明らかにできない。

今回の実務協議後、記者ブリーフィングは行なうが、説明会は今のところ考えていない。(以前、三田共用会議所で行ったようなFTA/EPAの公開説明会に類する)日韓EPAに対する公開の説明会開催の要望については、上に報告する。

(いま起こっている韓国シチズン精密争議に典型的なように、日系進出企業の韓国撤退について、韓国の労資慣行、文化・慣習などにのっとった日系進出企業側の誠意ある対応がなく、そのことで労資間対立が激化し、争議が頻発していることに対して)韓国スミダ、韓国山本の争議については承知している。民間企業のことなので、外務省としては何ともいえないが、個人的考えとして、企業として進出先の労働者のことをまったく無視することはないと思う。むしろ、一般的にいって韓国の争議は必ずしも合法的とはいえないのではないか。

(一般的にいっても意味がない。具体的争議に対して確証があっていっていることなのか? また、労働運動が合法かどうかは、その国内部の問題だ、とのわたしたちの指摘に対して)判った。そのことは上に報告する。(今日のような話し合いは、継続して持てるか、の質問に対し)今は判断できない。上に報告する。

あらまし、以上のような内容でした。山後・外務事務官は、見た感じではまだ若く、外務省を背負って虚勢を張っていたのか、対応が終始硬く、肩をいからせていたのが印象的でした。

こうして、2006年11月から中断していた日韓FTA/EPAが、また再開されそうな気配です。「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンでは、これまで多くの皆さんに支えられて、日本政府の推進するFTA/EPA政策に対して抗議の声をあげてきました。

力量不足で、日韓FTA/EPAに特化せざるを得ない限界も自覚しながら、これから、またわたしたちも行動を再開すべく、準備しているところです。「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンの活動再開にあたり、今後とも皆さんのご支援・ご協力をよろしくお願いします。

 

(以下、「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンの申し入れ書全文)

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日韓FТA/EPA政府間交渉再開に向けた実務協議の中止を求める申し入れ書

福田康夫 内閣総理大臣 様

高村正彦 外務大臣   様

現在、日韓FТA/EPA政府間交渉は、2006年11月の第6回交渉以降停止している。

去る4月の日韓首脳会談で6月中に再開に向けて実務協議を行なうことで合意し、今月25日から26日の2日間にわたって開かれようとしている。

私たちはこれに対して、日韓FТA/EPAが日韓労働者民衆の分断と貧困をもたらし、より一層の低賃金・劣悪な労働条件に向けた激しい競争に追いたて、環境や健康を破壊し、食の安全を脅かし、農業を切り捨て、労働運動の弾圧をもたらすものであることから、再開のための実務協議の開催に反対するものである。

私たちは、日韓FТA/EPAに対して、次の理由から反対する。

①政府間交渉であることを理由に交渉内容が公開されず密室交渉であること。その上

②NAFTA(北米自由貿易協定)では環境規制が「自由貿易を阻害する」としてカナダやメキシコの政府が米国系企業に訴えられて敗訴し、反公害などの環境保護運動や命や健康の安全を守る消費者運動が規制されることにつながり、環境や健康が破壊される恐れがある。

③米国などで発生したBSE(牛海綿状脳症)問題で牛肉の全面的な輸入禁止措置をとったが、米国からの強い圧力により輸入再開をしている。このようなBSE問題に示されるように、相互認証制度や検疫措置の迅速化・簡易化によって安全基準が緩和され環境や食料の安全が脅かされる。

④資本のグローバル化が進む中で、現在食料自給率は40%を割っており、食料主権が失われつつあり、残留農薬や添加物、遺伝子組み換えの問題が生起して食料の安全は確保できないまま、安い農産物が大量に輸入され国内農業はますます衰退し、農地は荒廃、農業の多面的機能は失われ、環境破壊にもつながる。またこうした農業衰退の対策として、自由化の外圧を利用しながら株式会社化など国内農業の構造改革を強行し、大規模農家しか生き残れないようにしようとしている。いわば貿易の自由化によって工業製品などの基幹産業の貿易が優先・優遇され、農業が犠牲になっていると言わざるをえない。日韓FТA/EPAもこの例にもれない。

⑤産官学による日韓共同研究会報告書には、日本側の要求として、これまで韓国労働運動によってかちとられてきた労使慣行や法律を投資の自由化を阻害する「非関税障壁」として問題視し、「NO-WORK NO-PAY原則を徹底すること」、「違法な労働争議に対して厳正迅速な措置をとること」などと労使関係に介入したり、内政干渉したりするものが含まれており、韓国労働運動の大幅かつ厳しい規制を要求する項目が盛り込まれており、実際このような日韓FТAの内容を先取りするかのように韓国シチズンや韓国エバラをはじめいくつもの日系企業で労働運動の弾圧が行なわれている。

これに加えて、この2、3年「ワーキングプア」「格差社会」など激しい競争を強いる新自由主義経済政策の問題点が焦点化してきているが、これは貧困という面での現われであり、大競争社会の中で今激しい勢いで貧困化が進んでいる。

日韓FТA/EPAが締結されたならば、これは国内だけの問題にとどまらず、日韓労働者民衆が貧困・低賃金に向かってより一層激しく競争させられていくのは火を見るよりも明らかである。

実際、フィリピン、インドネシアとのEPAでは看護師、介護師の受け入れが盛り込まれたが、研修生制度に見られるように、低賃金と劣悪な労働条件のために人手不足になっている病院や福祉施設の現場で、より一層の低賃金労働によりその穴埋めを図ろうとするものであり、出身国でも人材の流出を強いられ、医療の崩壊現象がひきおこされる問題がある。

また、BSE問題では、米国からの輸入再開以降、骨片などが混入したりするなど輸入条件に反する事態がたびたび起こっている。

さらに中国製餃子に農薬が混入した事件も私たちの記憶に新しい。

こうした事態を考えると、日韓FТA/EPAにおける相互認証制度や検疫措置の迅速化・簡易化によって安全基準が緩和されることは、環境や食料の安全が脅かされる可能性が大きく、ギリギリの水際の防波堤として、その国独自の認証制度、検疫制度、安全基準はどうしても必要である。

労働問題に関しては、「ビジネス環境の整備」と称して労働条件の規制の一層の緩和と労働運動に対する規制の一層の強化を要求しているが、一方でグローバリゼーションが一層進む中で、韓国では低賃金・劣悪な労働条件で酷使して莫大な利益を上げながら、より低賃金の国があると、いとも簡単にこれまでの進出先を切り捨てて新しい国に移転する日系企業の事例が後を絶たない。

1989年の韓国スミダ電機の闘争から始まって、2003年韓国シチズン、2006年韓国山本、そして現在、韓国シチズン精密と、続けてそうした日系企業の身勝手に対する韓国労働者の闘いが続いている。

もし日韓FТA/EPAが締結されたなら、こうしたことが合法的によりたやすく行なわれる可能性が大きい。  

以上のような点から、私たちは今回の日韓FТA/EPA政府間交渉再開に向けた実務協議に反対であり、日本政府は直ちにこの実務協議を中止するよう強く要求する。

2008年6月24日「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーン

〔訂正〕上記「申し入れ書」冒頭部分で、実務協議が「25日から26日の2日間にわたって開かれようとしている」の部分については、当キャンペーンの誤認で、山後・外務事務官によれば、実務協議は25日のみだそうです。

(以上)

 

   

 

 

 

 

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