全教組忠南支部からの報告

       第4号

    2008年1月29日

    毎週火曜日発行

 

 

 

 

韓國敎育の課題 - 憂慮される公敎育弱化と加速される市場化敎育 -

申炅燮(全敎組忠淸南道支部 참敎育室長, 漢文敎師)

 

Ⅰ. 導入に向けて

この度のシンポジウムは、2006年1月に韓國側の韓成俊(禮山女高)敎師の、‘韓國の敎育を取り巻く現狀と課題’, 2007年 1月 李世重(全敎組忠南支部 首席副支部長)敎師の ‘ 韓國敎育運動の現況と展望-全國敎職員勞動組合を中心として- ’, 2007年 8月 丸田裕司先生の ‘敎育基本法を取り巻く日本の敎育狀況’ に連續した敎育シンポジウムです。

昨年の夏、禮山で 丸田裕司先生のシンポジウムを聽取しながら、國は違っても、政府が敎育豫算を少投資しながら敎員を統制評價して、學校を統廢合するという新自由主義敎育政策(市場化敎育)が韓國の狀況と類似している事を感じ、敎育者として大いに共感をしました。 市場化敎育に立ち向かう 熊本縣高敎組に対して敬意を表します。

私は昨年に學校を休職して、忠南支部で專任(今年は組合員減少により1人減って4人の專任)活動しましたが、學校現場に復職します。この春に小学校6年生になる娘と入學する娘、ふたりの父親でもあります。娘たちは 宮崎駿監督の ‘となりのトトロ’(이웃집 토토로)を勸める父親と、‘クレヨンしんちゃん'(짱구는 못말려=크레용신짱)の視聽を適切に統制しようとする母親の間で育つ韓國の子供たちと同様に、多情多感に成長しています。 ところが、これからも中高等學校に進學しても、學校という入試監獄に閉じ込められる事なく、純粹さと自由な‘たま しい'を保っていられるかという心配が先走りしたりもします。

昨年の秋に、書店で古野陸雄(ふるのたかお)先生が書いた ‘百姓百作’-韓國では忠南洪城のプルム(풀무)學校の洪淳明 前 校長先生が飜譯- その翻訳本を購入して読みました。內容は ‘農夫は百働いて百個の作物を育成する。卽ち、農夫が追求する世の中は創意硏究の世界だという事'です。

'稻は主人の歩く足音を聞いて育つ'という言葉を聞いて成長して敎師になった私は、農夫の代身として敎師という立場を当てはめてもその意味が通じると思います。  

敎師は全ての人たちを教えます。農漁民, 商人, 宗敎人, 政治家, 軍人, 言論人, 醫療人, 企業家, 運動選手, 演藝人, 敎育者, 公務員, 藝術人, 勞動者(非定規職 包含) 等や、時には犯罪者までも、實に多樣な人々を教えます。また、その多樣な人々に個性や創意性を育てるという莫大な責任のある集團であります。そのため、政府や企業は敎師達に 懷柔や統制を通して彼らの意志を貫徹させ様とします。

しかし、個性と自律, 多樣性や創意性は、敎育の趣旨でない敎育を商品と見るそのことで所有と競爭を核心とする資本と市場の論理に接近すれば、個人と社會全體に不幸で大きな危險が內在しています。

現在、韓國敎育は李明博政府が継承することによって、それでも折衷をなしていた公敎育と市場化敎育の秤が 急激に一方に傾く事でしょう。岐路に立つ韓國敎育と全敎組の狀況を考察しながら、ともに苦悶して解決して行く地點を探って見ようと思います。

Ⅱ-1. 敎育界に及ぼす 李明博政府の ‘私敎育費 折半, 5大 Project’ の意味

- 折衷形市場主義から '自由放任的 市場萬能主義'へ轉換豫告

 

李明博(イ-ミョンバク)政府の核心敎育人事の ‘平準化ではなく、多樣化だ’ という本があり、政府が展開する敎育性格を含蓄 (下の 表1 參考)している。

現 盧武鉉政府は '國內敎育政策' 特に大學入試に於いて '3不政策 (高校等級制禁止, 寄與入學制禁止, 本考査禁止)'に象徵される國家的干涉と統制の綱を放さない敎育の '衡平性'についての名分をパターンとして、折衷形市場化敎育を推進した政府である。

李明博政府は無能で過大な敎育官僚たちを剔抉するとして、敎育人的資源部を解體または縮小し、大學入試と関連の ‘3不政策’を緩和し、全國の學校を序列化させ、學校を入試戰爭場につくり、敎員評價制を導入するであろうと豫想される。

これは國家の責務である敎育の公共性を放棄するものだ。韓國憲法31條 ‘すべての國民は能力に従って均等に敎育を受ける權利を持つ。’ ここで、能力にしたがい均等にとは、自由で平等にという意味を含んでおり、結果の平等ではなく機會の平等を意味する事が學界の定說であるにもかかわらず、父母の能力(財力や學力)に依って 子女の學校や學習權が変わってくるという教育惡循環の罠にかかり、やや憲法を違背する餘地が多い様に見える。

にもかかわらず、この様な競爭から苦境を切り抜けた88萬ウォン世代(今の韓國の20代は上位5%だけが‘安定した確固たる職場’に就く事ができ、その他はすでに人口の800萬を越えた非正規職の生活をする事になる。 非正規職の平均賃金119萬圓に、20代給與の平均比率74%を掛けると88萬ウォン程度になる。韓國の20代の憂うつな 未來を象徵)にとって、希望の道が見えないという事だ。  

◉ <表1> 李明博政府の敎育部門 公約分析

私敎育費 折半, 5大プロジェクト  內容  形態   問題點

高校多樣化

300 プロジェクト  

    寄宿形公立高 150ヶ所, マイスター校(專門系 特性化校) 50ヶ所, 自律形私立高 100ヶ所 重點育成    家庭教師․入試學院へ行かなくても済む様に、入試(專門)敎育を集約的に行う一流高等學校をつくろうという意圖に反して、 小․中學校入試の戰爭化 ⇒ 私敎育費 增加

英語公敎育

 完成プロジェクト   英語でどんな敎科でも授業できる敎師3000名を 每年增員して英語敎育を小学校時から學校が 責任を持つ   論評價値なし(世界的な人材を養成するというが、小学校の過度な英語私敎育市場を 助長する

大入制度自律化    內申․ 修能 反映率を大學の自律に任せて 修能科目も縮小して、窮極的に內申であろうと、修能でも、本考査でも大入は大學が自律的に行う  大學入試を敎育人的資源部から大學敎育協議會へ移管、國立大學の法人化推進(大學授業料暴騰)

⇒學校の市場化

基礎學力

 正しい人性

  責任制   各學校に責任經營と自律性を与え、國家 單位試驗を通して學校を評價

小学校學力診斷評價と中高校の學業成就度 評價を每年分期別に實施して、學校別の學力 情報等を多樣に公開し、試驗勉強をしなければならない風土を造成 學校の入試戰場化と全國學校の序列化 招來

*2008年韓國豫算は256兆1721億ウォン、敎育豫算は約35兆6654億ウォン、國防豫算は26兆7082億を策定。序列化に従った 學校豫算の差等のある支援豫想

オーダーメイド の

學校支援システム    强力な敎員評價、敎育課程の縮小、地域の 學習投資資源擴大で、敎員から敎育課程まで多樣な構造を評價體制として再編し一生懸命勉強できる様に條件造成    敎員統制

⇒敎員のやる気低下

⇒學校敎育の質低下

綜 合   5大プロジェクトを實踐、私敎育費は年間30兆ウォンから15兆ウォンに減少、貧しさの相続は敎育を通して斷絶     5大プロジェクトはこれまで持續して来た新自由主義敎育政策の完結形であり、生徒は 勿論のこと敎員まで競爭させ學校を市場化、,財力と學力の相続の固着化

私敎育費は今より2~3倍增加

(中略)

* 私立幼稚園は統計から除外、幼稚園 145/659名、特殊 186/437名、保健 178/387名

* 全教組の加入は校長, 教頭を除いた平敎師だけに許容される

 (中略)

組織外  市場化敎育 (需要者と供給者)の敎育政策構圖による社會的說得力と信賴確保の失敗

守舊勢力が全方位的攻擊(敎員評價,年暇鬪爭)により、全敎組の對抗を誘導>組織利己主義だと 罵倒

自由敎員組合(反全敎組)結成後、對政府團體交涉妨害     敎育両極化解消と敎育福祉實現の主導勢力として對政府、對國民活動展開

農山漁村敎育特別法の立法活動展開

全敎組の基調變更『こどもたちの中へ、學父母 のとなりに 』

對國會活動として、單一交涉制から比例交涉權 確保

組織內   新規敎師の加入低調、中壯年敎師の昇進への 葛藤、活動家と幹部の疲勞累積に因る活動沈滯

組織に於ける上下間の疏通不足と組合內の代議民主主義に対する不滿    敎員評價と成果給制度に不滿の敎師達の組織化

學校(分會) 真の敎育實踐發表大會の開催

若い敎師達の文化的欲求を充足させるグループ作りと、(こちらから)訪ねて行く硏修組織

敎育專門職勞動者としての專門性伸張

其他    多文化家庭(国際結婚家庭)、低所得層家庭增加  地域の勉強会の連合と、連係した疏外階層への敎育支援活動展開

 

Ⅲ. 結びの言葉

敎育は商品ではありません。また、敎師の敎育活動や學生と學校の潛在能力を數量化して序列化させる事は、本來敎育が追求する本質でもありません。これは資本の論理であり、この様な敎育哲學の背景は市場化敎育なのです。全世界的に、幾つかの國家を除いては、市場化敎育が加速されています。  

周敦頤(1017-1073, 北宋の哲學者)が書いた通書の中から、‘師, 第七’の部分を吟味して見ようと思います。(韓國と日本が、日本と韓國が同じ漢字文化圈なので讀解するのに都合が良い所がありますね)

故先覺覺後覺, 闇者求於明,而師道立矣. 師道立,則善人多,善人多,則朝廷正而天下治

(解釋─それ故に先に覚った人は後に覚る人を覚らせてくれるのだが、知に暗い人が明(賢明,聡明等)をもとめれば師の道が確立される。師の道理が確立されれば良い人が増え、良い人が増えれば朝廷が正しくなり天下が治まる

現在は昔の封建時代ではありません。しかし歲月が變わったからといって全てが変わるのではなく、時代を貫く‘何か’があると思います。私が考える時、生徒達を成績で一列に並べておいて、お前は何点だからどこの學校へ、 またはお前は何点だからどの學校に進學しろという心を持ってはいけないと思います。

少なくとも ‘となりのトトロ’に出て来る ‘しずか’と ‘めい’ 姉妹の様に、誰かに迷惑をかけないで、心の純粋な人達と共同體を指向して生きていく、そういう後世代を育てるという気持で敎壇に立たねばならないと思います。

また、古野陸雄先生の ‘百姓百作’ という言葉の様に、資本と市場が要求する商品としての多樣性でなく、私だけの素質と創意性を啓發させてくれる敎育同志になれたらと思います。全敎組忠淸南道支部は民衆と同胞に服務するという一念で、新自由主義敎育政策である敎育の市場化危機を突破して行くつもりです。

今回の敎育関連シンポジウムの私の發表はここで終わろうと思いますが、頭の中に漢字‘反’を連想してみて下さい。(ここでの反は市場化敎育反對の反です)それから鬪爭の右手を挙げて見て下さい。その次に共にやろうという連帶の心で、となりの同僚の肩に左手をのせてみて下さい。この瞬間、私達は國境を超越し、共にする敎育同志 ‘友’になるのです。

希望も 權利だ

 

黄昏になって 瞬く間に闇が押し寄せて来た

誰かが もうすぐに闇の沼でもがく様になるだろうと 靴の紐を結び直して出て行くと、周圍でざわめきあった

すると 知恵のあるひとりの人が言った

揺らいではいけませんよ、もうすぐ 希望の光があるでしょう

幾人かがその者を囲んで集まって来た

すると ひとりの人がその光は詩人が歌った星の事だと言い

となりにいた人は その光は 空の紋様(天紋)だと 合いの手を入れた

これを 寝ながら聞いていた人は かつて道に迷ってさまよっていたが その光を見て 抜け出して来たと言った

そばにいた人は 怖くて震えている子供の手を取り、星を見て

星がひとつ 私がひとつ、星がふたつ 私がふたつ 足し算を教える事ができると なだめた

そんな中で 黙りこくっていたひとりの人が 叫んだ

木の枝を持ってきてみなよ その昔 お爺さんのお爺さんがやった様に 私達が火をつけなければならないよ

拾って来た枝を集めて力いっぱい擦ると 煙りがあがって 火種が燃えあがった

見ていた みんなが 歡呼の聲をあげた

横にいた人が 大声で 叫んだ

この闇がどれだけ續くかわからないけれど 明るい日が来るだろう。 その時まで希望の火種を消してはいけません  

持っている物を この火の中にすべて投げ入れましょう

化粧紙, 古い手帳 , ハンカチ, ネクタイ, 地球儀, 画用紙, 帽子, 圖書商品券, 民主共和國の法典, 傷を巻いていた包帯, 消ゴム, 鞭, 日記帳, 公務員證, 靴下, 運動靴 紐, 聖經, 燃え残りのロウソク, ベルト, たった今拾ってきた枝々が 續々と火の中に入った

ある者は ポケットのお金を出して投げたし、ある者は髪を切って入れた

またある者は恥ずかしいのも忘れて 自分の持ち服をすっかり掴んで投げた

何にも投げ入れないある者が 群れに入らないで松葉杖をついたまま眺めていた人を 火の所に引導すると その者は 近づいて 松葉杖を投げた

すると ひとりの人が 炭で 地面に詩を書いて

ある者が即興で歌を歌った  

多くの人達がひとつになっておどりを踊った  

希望は 絶望の中から芽生える 火種

希望は お前の目の輝き, 希望は私の手振り, 希望は私達の足取り

希望は ともに歌う歌, 希望はともにおどる踊り

希望は新しい世の中を開いて行く 私達の信仰, 私達の精誠

希望は生きて 放棄する事のできない

赤子の 息づかい, 母の乳, 父の汗, 子供たちの明るい笑い

お前と私 みんなの鼓動する脈拍

希望は 生きて 放棄する事のできない私達の權利

   

 

 

 

 

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