文部科学省が高校新学習指導要領解説書に記載した領土問題に関する記載を弾劾する声明

       

 

 

 

 

文部科学省が高校新学習指導要領解説書に記載した領土問題に関する記載を弾劾する声明

 

2009年12月25日に文部科学省が、2013年度から実施される高校の新学習指導要領解説書を公表した。同省は同解説書の「地理歴史編 第5節 地理A 2 内容とその取扱い (1)現代世界の特色と諸課題の地理的考察」で、領土問題について次のように触れた。

(引用はじめ)また、「日本の…領域」については、「日本の領域をめぐる問題にも触れること」(内容の取扱い)と示されていることに留意し、北方領土(ママ)など我が国が当面する領土問題や経済水域の問題などを取り上げ、国境のもつ意義や領土問題が人々の生活に及ぼす影響などを考察できるようにする。なお、北方領土(ママ)など我が国が当面する領土問題については、中学校における学習を踏まえ、我が国が正当に主張している立場に基づいて的確に扱い、領土問題について理解を深めさせることが必要である。(引用終わり)

以上の引用文のうち、「北方領土など……必要である」という部分が「(2)現代世界の系統地理的考察」においても繰り返されている。

昨2008年7月に同省が公表した中学校新学習指導要領解説書は「また、我が国と韓国の間に竹島(ママ)をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土(ママ)と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である。」としたが、今回の解説書には「竹島」に関する記述がない。韓国に対する配慮とするマスコミ報道もある。

しかし、「我が国固有の領土で、韓国が不法占拠している」という独島に関する日本政府の公式見解を子どもたちに植え付けろという策動がなくなったのではない。それは現在進行形なのだ。事実、川端達夫文部科学相は、「竹島はわが国固有の領土であり、正しく認識させることに何ら変更があるわけではない」と強調し、鈴木寛副文科相もまた「我が国固有の領土で、韓国が不法占拠している」という政府公式見解に沿って、高校においても指導するよう求めると明言している。

2005年3月に島根県議会が行った「竹島の日」条例制定、昨年の中学校新学習指導要領解説書に続く民族排外主義の煽動そのものだ。絶対に許せない。

日本は約100年前までは歴史的に独島を自らの領土と認識してこなかった。江戸幕府も明治政府も、独島は朝鮮の領土と認めていたのだ。ところが、日露戦争のさなかに明治政府が独島の軍事的拠点としての有用性に注目し、朝鮮植民地支配の実質的初年である1905年に勝手に自国の領土と決め付けて奪い去ったのだ。略奪したのだ。盗んだのだ。泥棒だ。帝国主義的犯罪行為そのものだ。自らの土地を奪われた韓国・朝鮮民主主義人民共和国の民衆が独島問題に関して日本に対し怒りの声を上げるのは当然だ。帝国主義的拡張主義の元に奪い去ったものは謝罪とともに返還するのが当然なのだ。

私達は2005年3月16日、島根県議会において圧倒的多数の賛成で「竹島の日」条例が制定されたことに抗議し、「独島(トクト)=「竹島」問題に関する声明」をだした。独島に関する歴史的経過に関する部分を以下引用する。

(1)歴史的に朝鮮領であった独島(竹島)

江戸幕府は、独島のことを「松島」と呼び、「竹島」と呼ばれていた欝陵島とともに、日本人の渡航・居住が禁止された朝鮮領と認識していた。幕府の官撰地図に「松島」(独島)は記載されなかった。

明治政府も1905年の編入までは独島を朝鮮領と認識していた。1869年に調査のため朝鮮に派遣された外務省高官は、翌年提出した報告書『朝鮮国交際始末内探書』で、「竹島」(欝陵島)と「松島」(独島)は朝鮮付属になったとした。1877年、当時の最高国家機関である太政官が「日本海内竹島外一島ヲ版圖外ト定ム」(注:「竹島」は欝陵島を、「外一島」は独島を指す)とする指令を発した。両島は版図外、すなわち日本領ではないとする公式宣言である。1894年、明治政府が国家事業として製作した地図が『大日本管轄分地図』として発刊されたが、そこに両島は記載されなかった。日本海軍は、『朝鮮水路誌』94年版・99年版に両島を記載した。これは独島が朝鮮領であると認識していたことを示している。1900年、大韓帝国は勅令41号で鬱陵島周辺の「石島」(独島)が同国の統治下にあるとした。これに対し明治政府は異見を出さなかった。

(2)朝鮮植民地支配の開始と結びついた独島略奪

ところが、1905年、明治政府は日露戦争のさなかに軍事施設建設を目的として、そして同時に韓国に対する植民地化政策の激化の只中で独島を強奪したのである。「米国はフィリピン、英国はインド、日本は朝鮮」を手に入れるとした日米英間の帝国主義的合意を背景に、1904年2月、日本軍は日露戦争突入とともに仁川に上陸し首都漢城を制圧した。同月には日韓議定書調印を強要、5月には対韓施設綱領の閣議決定、9月には第一次日韓協約を結んだ。ロシア海軍が日本の輸送船を沈める状況の下、11月にはロシアにおいて「リアンクール島」と呼ばれていた独島にロシア海軍監視用望楼の建設が可能であると予備調査で確認。翌1905年1月、明治政府が「リアンクール島」を「無主地」と決め付けてその領土編入を閣議決定し、「竹島」と命名した。その際、関係国であるはずの朝鮮との協議も、官報による公示もなかった。政府の訓令を受けた島根県が県告示40号で同島を「竹島」と命名し、隠岐島司の所管にすると公示した。同年7月、同島に望楼が着工され8月から活動が始まった。つまり、日露戦争に勝つための軍事施設の建設を目的として独島の領土編入が秘密裏に強行されたのである。これは、戦時を理由に他国領と認識していながら領土編入した、まさしく帝国主義的な領土獲得であった(以上の歴史経過は半月城「日本の竹島=独島放棄と領土編入」(『日朝関係史論集』、新幹社、2003)に拠る)。そして、それは1905年10月の「乙巳保護条約」の強制による朝鮮植民地支配の開始と一体のものであった。(引用終わり)

しかし、日本の議会政党は自民党から共産党まで一つ残らず「竹島は日本の領土」と主張している。左派陣営においても、多くは日本においては右翼の主張である民族主義を嫌悪するためか、領土問題である独島問題については沈黙またはあいまいな態度をとっている。また、日本の民衆は、そのほとんどが、独島がどこにあるのか、独島を日本がこれまでどう認識していたのか、いまだに知らない。

したがって、私たちは、韓国民衆と固く連帯し、それを基礎にして、日本政府が行っている独島に関する民族排外主義煽動に抗し、これを打ち破る闘いを組織する。同時に、歴史を学び、正しい歴史認識を確立するよう努力する。そして、民衆全体が正しい歴史認識をつかみ、韓国をはじめとするアジア民衆と国境を越えて連帯し、戦争とグローバリゼーション策動を打ち破る反帝国主義運動が前進できるようにさらに力を注いでいく。

私たちは以下の事項を日本政府・文部科学省に要求する。

一、独島は日本の領土ではなく、韓国/朝鮮民主主義人民共和国の領土であることを日本政府は認めろ。 

一、日本政府・文部科学省は、中学校新学習指導要領解説書に記載した独島に関する記載をただちに撤回しろ。

一、日本政府・文部科学省は、独島および北方諸島、釣魚台(尖閣列島)を日本の領土とする記述をただちに削除しろ。

一、日帝のアジア侵略戦争と植民地支配によって殺された、または被害を受けた日本軍元「慰安婦」ハルモニをはじめとするアジア民衆に対する謝罪と補償を日本政府はただちに行え。

日本の労働者民衆のみなさん。日帝の民族排外主義煽動を粉砕しよう。歴史歪曲教科書に反対しよう。日本の軍事大国化を許すな。米軍と自衛隊の一体化を粉砕しよう。米軍再編を粉砕しよう。日韓・日朝労働者民衆は連帯しよう。

       2009年12月28日 アジア共同行動日本連絡会議

 

   

 

 

 

 

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